現地レポート

支援先であるマダガスカルはアフリカ大陸の南東、インド洋に浮かぶ島国で、日本の約1.6倍の国土に1,968万人の人々が暮らしています。
人口の6割が1日1ドル以下で生活をする貧困を抱える国です。
清潔で安全な水やトイレなどの衛生設備へのアクセスは、農村部では特に低く、25,000ある公立小学校のうち、水や衛生の設備が政府の基準を満たす学校はわずか500あまり。
半分以上の子どもたちが水に関する病気に日常的にかかっていると推定されています。そんなマダガスカルの中で、今回の支援の対象となった南東部のAstimo Astinanana地域は国内で水やトイレへのアクセス率が国内で最も低い地域のひとつで、支援が必要とされています。TAP PROJECTによる募金によって、Vangaindrano地区の16の小学校を対象に、井戸やトイレの設置と衛生習慣の普及活動への着手が始まりました。

手押しポンプ式井戸の建設

Vangaindrano地区は、一番近くの比較的大きな町から約70キロ離れています。さらに、Vangaindrano地区から支援先となる村までの道路は、舗装されておらず、凸凹な道を数十分も走らなければなりません。最初に訪れた村では、かつて現地のNGOが井戸の掘削に挑戦したものの、適切な掘削ができずに断念。たった一つの水源である湧き水を汲むため、バケツを持って何度も往復せざるを得ない状況にありました。
雨季になると、舗装されていない道路はぬかるみ、いっそうアクセスが困難となります。また、水田があるこの地域では、橋がたくさんあります。このような状況では、大型の掘削機を積んで、支援を必要とする村にアクセスすることは現実的ではありません。この地域では、地下の比較的、浅いところに水源があるため、支援の対象となった小学校には手動掘削で軽微な機械を使用し、ユニセフの指導の下、現地のNGOと村人が協力して、井戸の穴の掘削やポンプの設置を行いました。使用された手押しポンプは、修理がしやすいタイプのもので、あわせて、交換用の部品や工具も提供されます。
13の村にある13の小学校に14基の手押しポンプ付の井戸を設置しました。
さらに、それらの学校では、子どもたちに井戸やトイレの使い方、衛生習慣を教えます。
そして村の人たちにも、村人にも、水の正しい保管方法や衛生習慣の普及、ポンプのメンテナンス方法のトレーニングなどが実施されます。

トイレの整備と衛生習慣の教育

農村部で、トイレが使える人は10人に1人。Vangaindrano地区で、トイレがある学校は、315校中わずか17校です。いくつかの学校にはこれまでもトイレがありましたが、汚い、暗い、臭いがひどいなどの理由から、使用されていませんでした。トイレのない学校では、校舎の周辺の草むらなどで子どもたちが用を足しています。
このような状況では、排泄物に含まれるばい菌に、さまざまなかたちで子どもたちが触れることになり、下痢や体調不良などの原因となってしまいます。また、トイレがないことは、生理が始まる年齢の女の子が、学校に通うのをためらう原因にもなります。プライバシーが保たれず、学校を休み、授業についていけなくなってしまう、ということが起こりえます。
清潔で安全な水が飲めるようになっても、排泄物が適切に処理されなくては、衛生的な環境を得ることはできません。

そこで、今回のプロジェクトでは、14校で64の個室トイレ(男子用32、女子用32)が建設されました。
これらのトイレはこれまでとは形式の異なる、衛生面でより優れた機能を持ち、持続的な使用が可能なトイレ※です。
白と水色のペンキで仕上げられた外観は「トイレはきれいなところ」という意識を子どもたちに与えているようです。
トイレに使用できる水の量や、気候、経済状況を踏まえ、2種類のトイレが建設されました。
種類によって、継続的に使用できるもの(エコロジカル・サニテーション)、一定時間後、再建設が必要になるものがあります(換気式改良型トイレ)。
ただし、トイレを建設すれば終わりというわけではありません。この地域では古くから、トイレの使用が好まれないという状況でした。
そのためトイレの建設にあわせて14の村と周辺の保健センターで、手洗いや衛生習慣の普及活動を実施し、子どもたちや村の人々にトイレを使うことの意識付けをしていく活動を行っています。

「水と衛生クラブ」とトレーニング

  • 井戸もしくはトイレのいずれかが設置された16の小学校には「水と衛生クラブ」ができました。
    ここではクラブに所属する子どもや教師、地域や村の教育関係者が衛生習慣について勉強しています。そしてクラブのメンバーは周囲の人たちに衛生環境の重要性を広めていくとともに、井戸やトイレが継続的に使えるようにメンテナンスをしていきます。

支援対象地域での水と
衛生環境改善の成果

今回の支援により、Astimo Astinanana地域全体の公立小学校(910校)におけるアクセスは
・水 4% ⇒ 5%
・トイレ 9% ⇒ 10%に、
Vangaindranoの公立小学校におけるアクセスは、
・水 5% ⇒ 10%
・トイレ 10% ⇒ 15%
に改善しました。

マダガスカルからのレポート(You Tube)

Photo : ©日本ユニセフ協会/2009/satomi matsui

※水道水の利用推奨を呼びかける取り組みではありません。