透明で清潔な飲み水を毎日飲めるのは、日本では当たり前のことかもしれません。しかし、世界では、未だに21億人が安全な水を自宅で入手できず、45億人が安全に管理されたトイレを使うことができません。安全でない飲み水と不衛生な衛生習慣は、下痢性疾患を招き、年間30万人以上の子どもが、命を落としているのです。また、コレラ、赤痢、A型肝炎、腸チフスといった感染症の伝染とも関連しています。
子どもの生存にとって、「水」は重要な役割を果たしています。世界の子どもたちのために70年にわたり活動してきたユニセフは、100か国以上の国と地域で安全な水と衛生的な環境を確保するための活動を行っています。
ひとりの子どもたちが生きるために、一日あたり少なくとも20リットルの水が必要といわれています。命と健やかな成長を守るためには、安全な飲み水を使えるようにすることが何よりも大切です。

安全な飲み水を家の近くで手に入れられるようにするために、ユニセフは村や学校などに井戸などの給水設備を設置しています。手押しポンプで水をくみあげる井戸、雨水を貯めるタンク、山の湧き水を水道管で麓まで引いてくるなど、その土地の事情にあった設備を作っています。
さらに、それらの給水設備を長期間使い続けられるように、住民の水管理委員会を作ったり、修理に必要な工具や部品を提供したり、修理方法の指導などを行っています。
そして、衛生的な生活を送れるようにすることも、病気の予防には重要です。食事の前に石けんで手洗いをするなどの衛生習慣を根付かせる教育や啓発キャンペーンの実施、学校に衛生的なトイレを設置したりするなど、ユニセフは衛生分野での支援活動も行っています。
また、自然災害など緊急事態が発生したとき、ユニセフは現場で「水と衛生」に関してさまざまな支援団体の活動を調整する主導機関としても機能します。いちはやく避難民キャンプに安全な飲料水を供給するほか、トイレや手洗い場を設置したり、浄水剤や石けん、ポリタンクなどの支援物資を届けます。

清潔な水が手に入るようになることで、子どもたちは、汚れた水でお腹をこわしたり、感染症にかかることがなくなり、健康状態が改善します。石けんで手を洗うだけでも、下痢性疾患による死亡率を40%以上も減らすことができるほか、肺炎などの急性呼吸器感染症や寄生虫、皮膚病や眼の病気にかかる危険性も減らすことができます。

そして、家の近くで水が手に入るようになれば、子どもたちは長い道のりを歩く水くみからも開放され、学校に通う時間をつくれるようになります。体が丈夫になれば、学校を休まなくてもすみます。
清潔な水がたくさんあれば、体を洗うことも、洗濯をすることも、料理をすることも、野菜を育てることもできるようになり、人々の生活を大きく変えることができるのです。

2015年、ミレニアム開発目標(MDGs)が達成期限を迎え、新たな目標として、持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました。「持続可能な開発目標(SDGs)」は、基本的な水と衛生(WASH)へのアクセスの向上に向かって、MDGsよりもさらに高い目標設定として「安全に管理された飲み水」「安全に管理された衛生施設(トイレ)」を掲げ、新たな指標を取り入れました。「安全な水と衛生施設(トイレ)をすべての人に」というSDGsの目標6を達成するために、私たちは、かつてないほどの規模で、世界的な運動を展開する必要があります。

<SDGsの指標>
安全に管理された飲み水:必要な時に自宅で使用できる、汚染されていない飲み水
基本的な飲み水(供給サービス):自宅から往復30分以内で水を汲んでくることができる、改善された水源があること。
限定的な飲み水(供給サービス):自宅から往復30分よりも長い時間をかけて水を汲んでくることができる、改善された水源があること。
安全に管理された衛生施設(トイレ):人の排泄物が他と接触されないように分けられ、安全で衛生的に処理できる設備を備えているもの
出典:JMP報告書『衛生施設と飲料水の前進:2015 ミレニアム開発目標達成度評価』