皆さまから寄せられた募金で、現在、マダガスカル南東部の小学校を中心に井戸や給水設備、トイレの設置が進められています。また地域の方々に設備を長く使ってもらうために、衛生習慣の普及も行っています。2010年11月に実施した現地支援先の視察では、これらの施設がどのように使われているか、また、支援がまだ行われていない地域の現状はどのようなものかを知ることができました。
TAP REPORTでは、この現地視察の様子をお届けしてまいります。

前年までのTAP REPORT

「まるでマジックみたい!」

ポンプ式の井戸につながった8つの蛇口から出てくる水を見て、多くの子どもたちが口にしたのが、この言葉です。
マダガスカル南東部ヴァンゲンドラノ州にあるMarindonaky公立小学校に1ヶ月前にできた最新式の手押しポンプ付の井戸は、まさに魔法の道具。これまで子どもたちは、何キロも離れた場所に水を汲みに行っていました。しかし、その水は濁っていたり、虫が浮いていたりと、決してきれいなものではなかったのです。
それが、村の中、学校の目の前にある井戸のポンプを押して、蛇口をひねるだけで、透明できれいな水が出る。私たちにしたら当たり前のことかもしれませんが、村の人や子どもたちにとって、本当に初めて体験する驚きだったようです。

  • ポンプを押して蛇口をひねると、きれいな水が勢いよく流れ出します。

  • 新しい井戸は、子どもたちや村人に大人気。すぐにみんな集まってきます。

村をあげての大歓迎

ヴァンゲンドラノ州都から、赤土のデコボコ道を4WD車で1時間半ほど走ると到着するMarindonaky公立小学校。訪れた11月は、南半球に位置するマダガスカルではちょうど夏がはじまる季節。快晴の日差しはまぶしく、多くの女性が帽子に加えて、日傘をさして歩くほどの日でした。
クルマを走らせていると、突然、沿道にユニセフマークの描かれた旗を持った村人や子どもたちの姿が目に飛び込んできます。視察チームは大歓声に迎えられ、村の高台にある、200人ほどの生徒が通う小さな小学校を目指しました。
学校は、3つの教室が並ぶ飾り気のない建物で、赤土の校庭の真ん中には、ここが学校であることを示すマダガスカル国旗が掲揚されています。
到着するとすぐに、小学生全員、校長先生、村長、村の方々が100人以上集まった、校庭の輪の中に迎えられました。そこで、子どもたちオリジナル(?)のユニセフの歌、感謝の気持ちを表現する伝統の踊りなどが次々と披露されます。笑顔で歓迎してくれる様子を見ていると、皆さまの募金で設置された井戸が、本当に子どもたちの生活をよくしていると実感することができました。

  • ユニセフ♪ユニセフ♪ラララララ~♪印象に残る歌で出迎えてくれました。

  • 歓迎のダンス。子どもたちは、ララフィアで編まれたおそろいの帽子をかぶっています。

はじめて飲む、魔法の水の味

ポンプ型給水設備の水は、設置直後は濁って飲めない水が出てきたといいますが、現在は、透明で、澄んだ水が出るようになりました。国際基準での水質成分検査もクリアしています。

水を飲んだ子どもたちの感想は「甘い!」「やわらかい!」「快適!」と、まさに魔法を体験したかのような驚きの声。みんなでかわるがわる交代してポンプを押し、蛇口からどんどん出てくる透明な水で、手を洗ったり、水を飲んだりと、“マジック”を体験していました。

また、Marindonaky公立小学校には、8つの蛇口がついたポンプ型給水設備の他にトイレの設置が進められ、視察時に後一週間で完成という状況でした。
これが完成すると、下痢や体調不調など衛生面の問題だけではなく、生理が始まる年齢の女の子が学校に通うのをためらうことも避けられます。実際、現地の女の子たちからは、男女別々のトイレが作られて本当にうれしい、という声を聞くこともできました。

  • きれいな水を飲めることで、水に関する病気のリスクが大きく減ります。

  • コップに注がれたきれいな水。「水」はマダガスカル語で「RANO」と言います。

  • マダガスカル共和国の小学校を中心にポンプ型給水設備やトイレの設置が進められています。

Photo : ©日本ユニセフ協会/2010/satomi matsui

※水道水の利用推奨を呼びかける取り組みではありません。